「ねえ」と彼女は言った。「一人しか子供のいない両親はあまり仲が良くないっていうのは本当だと思う?」
“哎”她问道,“你说,只有一个孩子的父母,是不是关系不怎么好啊?”
僕はそのことについて少し考えてみた。でも僕にはその因果関係かよく理解できなかった。「どこでそんなことを聞いたの?」
我从来都没有考虑过这种事,但是,我不理解这种因果关系。“你这些是从哪儿听说的?”
「誰かが私にそう言ったのよ。ずっと前に。両親の仲が良くないから一人しか子供ができないんだって。それを聞いたときは、とても悲しかったわ」
“是某个人给我说的呀,很久以前了。因为父母的关系不好,所以只要一个孩子。我当时听说这话的时候,十分悲伤呢。”
「ふうん」と僕は言った。
“嗯......”我回答。
「あなたの家のお母さんとお父さんは仲がいいの?」
“你父母亲的关系好吗?”
僕はそれにはすぐに答えられなかった。考えたこともなかったからだ。
我却没能立即回答上来,因为我从没想过这个问题。
「うちの場合は、お母さんの体があまり丈夫じゃなかったんだ」と僕は言った。「よく知らないけれど、子供を産むには体の負担が大きすぎて、それで駄目なんだって」
「自分にもし兄弟がいたらって思うことある?」
「ないよ」
「どうして? どうして思わないの?」
“我呢,母亲的身体不是太好。”我说,“我虽然不是很了解,据说是生孩子的时候,身体负担过大导致的。”
“那你想过有个兄弟会怎样吗?”
“我没有。”
“为什么?为什么你没想过?”
僕はテーブルの上のレコード・ジャケットを手に取って眺めた。でもそこに印刷された字を読むには、部屋はあまりにも暗すぎた。僕はジャケットをもう一度テーブルの上に戻し、手首で何度か目をこすった。僕は以前、母親に同じ質問をされたことがあった。
我拿起了桌子上唱片外壳看,但是房间很暗,看不清上边印刷的字。我又把唱片外壳放到桌子上,用手揉了揉眼睛。以前,我母亲问过我同样的问题。
そして僕がそのときに返した答えは母親を喜ばせも悲しませもしなかった。母親は僕の答えを聞いて、不思議そうな顔をしただけだった。
然后,我的回答既没让母亲悲伤也没让母亲高兴。只不过,母亲在听完我的回答后,脸上露出不可思议的表情。
しかしそれは、少なくとも僕自身にとってはきわめて正直で誠実な答えだった。僕の答えはとても長い答えだった。そして僕はそれを要領よく正確に表現することができなかった。
但是,不管怎样,那是我直率、诚实的回答。因为我回答的很长,而且我也没能准确的抓住要领。
でも僕が言いたかったのは結局のところ、「ここにいる僕はずっと兄弟なしで育った僕なんだし、もし兄弟がいたとしたら、僕は今と違う僕になっていたはずだし、だからここに今いるこの僕が兄弟かいたらって思うことは、自然に反していると思う」ということだった。だから僕はその母親の問いをなんだか無意味なもののように感じたのだ。
但我最终是这么说的。“现在的我,是在没有兄弟的情况下被抚养大的,如果我有兄弟,那我就成不了现在的我。所以我觉得,现在的我如果我思考有兄弟这件事儿,一定是违反自然的。”所以,我觉得母亲的问题是没有意义的。
僕はそのときと同じ答えを島本さんに対しても返した。僕がそう言うと、島本さんはじっと僕の顔を見ていた。彼女の表情には、何かしら人の心を引くものがあった。そこには——これはもちろんあとになって思い返してみてそう感じたわけだが——人の心の薄い皮を一枚一枚優しく剥いでいくような、そういう官能的なものがあった。表情の変化に伴って細かく形を変える薄い唇と、瞳のずっと奥の方でちらちらと見えかくれする仄かな光のことを僕は今でもよく覚えている。その光は、細長い暗い部屋の奥の方で括れている小さな蝋燭の炎を僕に思い起こさせた。
我把我的回答对着岛本重复了一遍,我说的时候,岛本直勾勾地盯着我的脸看。她的表情,不知怎么地,有一种摄人心魄的东西。那东西–––当然是我后来回想起来的–––能轻轻地把人的心一片一片剥开的,那种肉感。那伴随着表情变化而改变形状的薄唇,眼眸深处一闪一闪的亮光,至今我都记得。那亮光,总能让我想起在狭长黑暗的房子深处,一闪一灭的小小烛光。
「あなたの言ってること、なんとなくわかるような気がする」と彼女は大人びた静かな声で言った。
“你说的话,我好像明白了。”她用类似大人的安静口吻回答道。
饕餮思文译。
选自村上春树《国境以南,太阳以西》
网友评论
这篇翻译比较通顺,据说村上的语感比较接近于英语。赖明珠的翻译,比较接近于原作。林少华则差一些,不知缺否?
多做一点日语方面的翻译吧。这对于你写作是大有好处的。